◆ 不動産購入申込金が戻ってこない! |
~ 申込書の「法定効力」とは? ~
実際にあった実話で検証してみましょう。
友人からこのような相談を受けたことがあります。
彼は、土地を購入して、2世帯住宅を建てる計画
でした。地元の不動産屋さんから、ある土地を
紹介され、現地を見学し、気に入ったので検討
したい旨を伝えました。
すると、すかさず担当営業マンが、
「この土地は人気があるので、すぐ売れてしまう
かもしれません」と言うのです。
さらに、営業マンは「買付証明書を書いてくれれば、
この土地は他の方には売りません」と迫ります。
友人は「他の人に売れてしまう前に」と少し焦って
しまい、慌てて買付証明書にサインをしたそうです。
さらにさらに、営業マンは冷やかしではない
“証”として、「申込金を用意してください」
と言ってきました。
その額、ナント100万円・・・!!
友人は真剣だったので、すぐに銀行で出金し、
100万円を渡したそうです。
その後、土地の売主から「売渡証明書」が届きました。
しかし、友人は両親とよくよく相談した結果、結局、
その土地の購入を見送ることにしたのです。
早速、担当者にその旨を伝えると、その担当者は
なんと、「買付証明を提出して売主から売渡証明が
出ているので、すでに契約は成立しています。
よって、キャンセルするとお金(申込金)は返還
できません」と言ってきたのです。
そこで、私の元へ、友人から連絡が入りました。
「そんちょう、お金は本当に戻らんのか?」と・・・
◆「買付証明書」・「売渡証明書」とは? |
私は、「全額返してもらえるよ」と
はっきり伝えました。
友人は「え!?ホンマに!?」と
ビックリしていました。
少し話を整理してみましょう。
そもそも【買付証明書】【売渡証明書】とは
どのような書面なのでしょうか?
マンションを売りたいAさんのところへ
マンションを買いたいBさんが見学にやって来ました。
Bさんはそのマンションを気に入ったので、
Aさんに「このマンションを気に入ったので
譲ってください」と伝えました。
Bさんも「お願いします」と了承され、
後日契約となりました。
本来なら、このようなやりとりがあります。
ただ、実際には、AさんとBさんとの間には
不動産屋さんが入りますよね。
実際は、AさんがBさんに
直接交渉することはありません。
そこで、Aさんの意思を伝えるために【買付証明書】と
いう書面にサインをもらい、不動産屋さんに預けます。
そして、その書面を不動産屋さんがBさんに渡して
購入の意思を伝えます。そして、Bさんが売ることを
承諾すれば、Bさんの意思を伝えるために、
【売渡証明書】にサインします。
買主の意思表示を残す書面が【買付証明書】であり、
売主の意思表示を残す書面が【売渡証明書】です。
私の友人は買主なので、買付証明書を渡し、
売主からは売渡証明書が戻ってきたのです。
不動産屋さんの担当者ならば、
買主や売主の意思確認は、必要な仕事です。
ただ、【買付証明書】と【売渡証明書】だけの
やりとりで、売買契約が成立しているという
主張は通りません。
また、 民法の原則である『諾成契約(だくせい
けいやく)』からすると、一旦「申込」と「承諾」の
意思表示がされているので、契約が成立している
ようにも見えますが、
判例では、
『具体的な売買の交渉は、売買について互いに合意が
成立して初めて、売買契約が成立するものであり、
互いに合意したとは言えない状況(※)になった場合
は、売り渡しの承諾を一方的にする(=売渡証明書を
発行する)ことによって、直ちに契約成立するものでは
ない』
としています。(※友人の場合は、後日断っています
から) (※大阪高判/平成2.4.26)
◆ 預かり金は返還される! |
契約前に受け取るお金は、宅建業法上、「預り金」と
して取り扱うため、「申込み」がキャンセルされれば
返還を拒むことは禁止されています。
【宅建業法施行規則16条の12第二号】
このような話は、賃貸住宅の「申込み」でも
よく耳にします。
賃貸の場合、申込金として1万円など小額である
ため、返還を拒否されたら「もういいか」と
泣き寝入ることが多いようです。
しかし、絶対に返還してもらえるお金なので、
キッチリ返還請求をしてください。
もし、申込金を要求された場合、必ずキャンセル
時には返還されるのかも、念のため確認して
おきましょう。
そして預ける場合も、
「預り証」に一筆書いてもらうことをお勧めします。
【追 伸】
友人は「専門家に相談したら返却されるお金だと
聞いた」と伝えたところ、無事全額返してもらった
そうです。
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